2025年5月、米中央情報局(CIA)は、中国共産党の高官や職員に向けた中国語の動画をSNS上に公開し、内部機密情報の提供を呼びかけた。中国共産党内で、権力闘争が激化し、高官の失踪も相次いでおり、CIAの新たな情報戦略が注目を集めた。
CIA 中共の内部闘争を暴露 官員に運命の主導権を握るよう訴える
中共官員の失踪件数が増加して、高級指導者から基層官員、地方役人や軍人まで、多くの人物が不可解に姿を消しており、外交部長の秦剛もその一人であった。彼は頻繁に公の場に現れていたが、失踪後は、問い合わせが殺到しても一切の情報が公にされなかった。名も知られていない人々の行方不明については、そもそも報道もされず、注目すらされていない。こうした状況下で、中共官員たちは、自らの身の安全に強い不安を抱えた。
このような情勢を背景に、5月1日、CIAは、中国の体制に不満を抱く人々や異論を持つ官員に向けて、アメリカ側に情報を提供するよう呼びかける2本の動画を公開した。
動画はいずれも約3分間で、標準中国語による音声とハリウッド風の編集が特徴で、映像は清潔感にあふれ、緊張感のある音楽と抑制されたナレーションにより、明確なメッセージを視聴者に伝える。
これらの動画は、CIAのYouTube、Facebook、Telegram、Instagram、Xなどのプラットフォームに掲載され、1本目の動画は中共高官を主な対象とし、同僚の粛清、裁判、そして「人間蒸発」と称される状況に直面する様子を描く。高官たちは、未来に対する不安に苛まれており、動画は「運命はあなたの手の中にある」というメッセージで締めくくられた。
2本目の動画は、中下層の官員に焦点を当てており、昇進の見込みがなく、苦労しても報われない体制内の労働者たちの姿を取り上げ、動画の終盤には「天は自ら助くる者を助く。運命はあなたの手の中にある」とのメッセージが表示された。
CIA長官ジョン・ラトクリフ氏は、これらの動画が現状から抜け出したいと考える者に、新たな選択肢を示す目的で制作されたと語った。動画では、CIAとの連絡方法として「ダークウェブ連絡チャンネル」が紹介されており、同チャンネルの安全性と秘匿性、離反者およびその家族の将来を守る体制についても強調された。
ラトクリフ長官は、今回の動画が、中共のインターネット検閲、いわゆる「ファイアウォール」を突破し、必要とする人々に届くことを強調した。彼は、過去に公開された中国語版「ダークウェブガイド」が数百万人の中国ユーザーに到達したと明かし、多くの人々が、この種の情報に強い関心を寄せたと述べた。
ラトクリフ氏は、トランプ政権一期目で、国家情報長官を務めており、その時点ですでにアメリカの情報機関は中共との「切り離し」を積極的に推進していたと回顧した。現在もその動きは継続中だ。
今回の一連の措置は、アメリカの情報機関が、中共内部の「インサイダー」との連携を模索しているという明確なシグナルであり、今後の展開に大きな関心が寄せられたことだ。
現在、中共上層部では、権力闘争が異常なまでに激化し、外交部長の秦剛、国防部長の李尚福、軍事委員会副主席の何衛東といった高官の「失踪」や失脚が相次ぎ、中共官界には、不安が広がり、CIAはこの不穏な空気をいち早く察知したうえでの対応だ。
元CIA中国担当部長のデニス・ワイルダー氏は『フィナンシャル・タイムズ』に対し、「この種のリクルート動画はCIAの対中作戦において前例がない」と語った。
ラトクリフ氏はトランプ政権時代に「中共は、アメリカにとって最も強力な敵であり、経済、政治、軍事のあらゆる面で脅威をもたらしている」と断言した。
2025年4月、ラトクリフ長官は、内部メモを通じて、中共をCIAの最重要な敵と位置づけた。「我が国の歴史上、中共ほど危険な敵は存在しない」と警告し、中共が経済、軍事、技術の各分野において、世界覇権を握ろうとし、アメリカを凌駕するための積極的な試みを続けていると指摘した。CIAは、この脅威に立ち向かうため、対中戦略の強化が必要であると訴えた。
偽装された強硬 露呈する恐慌 中共はどこまで耐えられるか
米中貿易戦争が激化する中で、中共は、中英両語のプロパガンダ動画「ひざまずかない」を発表し、貿易問題でアメリカに屈する意図がないことを強調した。この強硬姿勢は、国民の愛国心を刺激するには至らず、多くの国民は動画から、北京当局が、重圧の中で不安と葛藤に揺れている様子を読み取った。
評論では、「ひざまずかない」という題名が象徴する通り、中共の戦狼的な姿勢は、すでに「最後まで対抗する」という決意ではなく、「屈するか否か」の内心の迷いを露呈したと分析され、この動画が、外部に対して明確なメッセージを発信しており、貿易戦争によって中共が追い詰められ、「ひざまずかない」という信念は形だけとなり、希望の見えない弱気だけが、残された現状を示すと言う。
動画の中で、中共は「ひざまずかない」と声高に宣言し、各国に対してアメリカの「覇権」に反抗するよう呼びかけた。
一方で、アメリカと協力関係にある国々に対しては、「毒を飲んで渇きを癒す」「卑屈にひれ伏す」といった表現を用いて嘲笑し、アメリカとの交渉に応じた国々を、あたかもすでに屈服したかのように描いた。
評論によれば、中共は自らの立場を高める一方で、他国を見下す手法を通じて、自国の弱さを覆い隠そうとしている。しかしこのやり方は、他国の反感を買うばかりで、真の同盟国を得るには至らないのだ。結局、中共は「自ら石を持ち上げて自らの足を打つ」結果を招いたにしか過ぎない。分析によると、この動画の目的は、中共の宣伝と反米世論の形成にあり、中共は自らを「闇夜の松明」と位置づけ、反米陣営の旗振り役を演じようとしたが、しかし現実は厳しく、多くの国が、アメリカとの交渉路線を選び、自国の利益を最優先にした。新たな貿易秩序の構築において、中共側に立ちアメリカを敵視する国は現れなかった。
中共が「弟分」と見なすベトナムも、真っ先にアメリカに妥協し、中共の影響圏を突破した。習近平が数多くの協定を締結しても、ベトナムの外交方針は一貫して変化しなかった。
中共と親密な関係にあるカンボジアも、アメリカとの協調姿勢を示し、中国製品の原産地偽装防止に協力した。
中共の「鉄の兄弟」と称されるパキスタンは、初めてアメリカから原油を輸入し、その金額は約10億ドルに達すると言う。これは、アメリカに対する30億ドル規模の貿易黒字を縮小する方針の一環だ。
これらの動向は、中共が依存してきたグレーな輸出ルートが、次々と閉ざされたことを意味する。
この状況の背景には、ホワイトハウスが複数の国に対して、高関税を課した政策がある。具体的には、カンボジア49%、ラオス48%、ベトナム46%、ミャンマー44%、タイ36%、インドネシア32%、マレーシア24%、パキスタン29%といった関税率が設定され、現在、70を超える国がアメリカとの貿易協議を進めている。ブルームバーグの報道によれば、トランプ政権は、協力を拒む国々に制裁を検討し、中共との貿易関係を縮小する方向で圧力をかけたと言う。
つい最近、トランプ大統領は、中共がアメリカと直接交渉を行っていることを明かした。中共はこれを否定したが、韓国メディアは中共高官が、アメリカ財務省に出入りする姿を撮影し、実際に、米中当局者の会談が存在した事実を報じた。その後、トランプ大統領はインタビューで、習近平から電話があったことを語った。すでに交渉が進行しているにもかかわらず、中共がこの「ひざまずかない」という動画を発表した理由は何か。
中国問題専門家の章天亮氏は、番組内でこの動画の発表時期が、アメリカ財務省で、中共高官との秘密交渉が行われた直後であったことから、交渉が「決裂」した兆候であると分析した。
動画は、戦狼的な演出に満ちており、朝鮮戦争の映像を挿入することで、当時アメリカが戦争で勝てなかったことを引き合いに出し、現在も同様に勝てないという印象を与えようとしている。しかし現実には、中共がこの貿易戦争で勝利を収める見込みはなく、アメリカには依然として製品や技術の禁輸など、多様な制裁手段が残されている。
アメリカのスコット・ベッセント財務長官は、状況次第で、中国に対する制限措置をさらに強化する可能性があると述べた。
米中貿易戦争が中国社会にもたらす影響
アメリカでは、対外貿易交渉が順調に進行し、トランプ大統領は年収20万ドル以下の家庭に対する所得税免除という経済政策を推進、家計に大きな変化をもたらす見通しである。この政策が実現すれば、該当する家庭では年間1万ドル以上の所得増が見込まれ、消費の活性化を通じて、経済の繁栄に寄与する。
一方で、中国共産党は、米中貿易戦争により厳しい局面を迎え、経済には下押し圧力がかかり、同時に政治的緊張も増し、民間の不満が急速に膨らんだ。
ゴールドマン・サックスは、中国が貿易戦争により2000万件の雇用を失う可能性を予測し、野村は1580万件と見積もった。4月29日、アメリカのベッセント財務長官は、「中共が貿易戦争を終結させない場合、近いうちに1000万人が職を失う可能性がある」と警告した。
雇用喪失の規模にかかわらず、現在の中国では、各地で賃金未払い、賃金請求、ストライキ、権利保護に関する事案が相次いで発生。たとえば、4月28日には、浙江省桐郷市の生迪光電科技股份有限公司において、1000人以上の従業員が賃金未払いを理由に、2日間連続でストライキを実施し、工場および烏鎮鎮政府前で集会を開き、2024年1月以降の未払い賃金の支払いを要求した。4月27日には、四川省遂寧の上達電子工場の労働者が、長期間にわたる賃金および社会保険の未払いに抗議した。また、4月24日には湖南省道県の広新運動用品有限公司において、工場閉鎖による補償金未払いに対して、数百人の労働者がストライキを実施した。内モンゴル自治区通遼市の金燦御園小区では、労働者がビルの屋上に集まり、「飛び降り」をほのめかしながら賃金の支払いを強く求めるという極端な行動も確認された。
こうした中で、中国共産党は民意を顧みず、党内では権力闘争が一層激しさを増し、中国問題の専門家によれば、現在の中共上層部では、漸進的な宮廷クーデターが進行中であり、内部闘争は極めて激しい様相を呈していると言う。
ある専門家は、「中共はすでに最後の『恥じらいのベール』を失いつつある」と述べ、「もはや中共の課題は『跪くか否か』ではなく、『どれだけ耐え抜けるか』に変わった」と指摘した。
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