アメリカのトランプ大統領は5月25日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、「アメリカによって支配されることになるだろう」と米ニュージャージー州の空港で記者団に語った。さらに、日本製鉄については「部分的な所有権をもつ」と述べ、「アメリカが管理する。そうでなければ取引に応じない」と発言し、日本製鉄については「良い会社」と評価した上で、「数十億ドルを投資することになる。どうなるか見てみよう」と述べた。
株式の取得比率など具体的な枠組みには言及しなかった。買収の詳細は依然として明らかになっておらず、今後の焦点は日本製鉄がどの程度の株式を取得するかに移っている。
トランプ大統領は23日、自身のSNSで「これはUSスチールと日本製鉄による計画的なパートナーシップであり、少なくとも7万人の雇用創出と米国経済に140億ドルの貢献をもたらす」と投稿し、両社の提携を承認する意向を表明した。USスチールは引き続き米国に本社を置き、ピッツバーグを拠点とする方針も強調された。
この買収計画は、2023年12月に日本製鉄がUSスチールを約141億ドル(約2兆円)で買収することで合意したことに端を発する。日本製鉄は当初、USスチールを完全子会社化する方針を示していたが、バイデン前大統領が2025年1月に安全保障上の懸念から禁止命令を出していた。トランプ大統領も当初は慎重な姿勢を見せていたが、日本製鉄が米国への設備投資額を大幅に増やす方針を示したことで、承認に傾いたとみられる。
日本製鉄は「パートナーシップを承認した大統領の決断を歓迎する」との声明を発表し、USスチールも「米国とその労働者、製造業のために最適な取引」としてトランプ大統領のリーダーシップに感謝を示した。
今後は、トランプ大統領が求める「アメリカによる支配」と日本製鉄が目指す「完全子会社化」との間で、株式取得比率や経営権の枠組みがどのように決着するかが最大の焦点となる。現時点では、具体的なスキームや取得比率は明らかになっていない。トランプ大統領は6月5日までに最終判断を下す見通しであり、今後の動向が注目される。
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