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海外渡航移植の影にある現実 移植体制の整備こそが根本解決

2025/06/06
更新: 2025/06/06

臓器移植は現代医療において命を救う高度な技術として発展してきた。一方で、日本では移植希望者約1万5千人に対して実際に移植を受けられるのは年に400人程度、わずか2〜3%に過ぎない。この供給不足の現実は、多くの患者を海外移植、特に中国への渡航移植へと向かわせている。

6月5日、国内の適正なドナー確保の仕組み構築と、違法な海外移植の防止をテーマにした国際シンポジウムが東京都内で開催された。

今こそ、制度の立て直しを

シンポジウムでは衆議院議員の石橋林太郎氏が登壇し、「中国での臓器収奪は現在進行形の深刻な人権侵害であり、決して看過できない」と強調。日本では平成9年の臓器移植法制定以降、提供件数が伸び悩み、移植医療が進まない現状について、「この問題は政府だけに任せてよいものではない。政治、医療界、市民が一体となって取り組むべき課題だ」と述べた。さらに「海外に頼らざるを得ない状況を改めるには、国内体制の整備と法改正が急務である」と訴えた。

石橋林太郎衆議院議員(清川茜/大紀元)

 

文化の問題ではなく、制度の欠陥

湘南鎌倉総合病院臓器移植外科部長の大久保恵太医師も、人口100万人あたりの臓器提供者数は0.62人と、日本の臓器移植率が国際的に非常に低いと述べた。また、移植医療の停滞原因は文化ではなく制度にあると指摘。

診療報酬の低さや医療者への過重な負担が移植手術の実施を困難にし、結果として臓器提供が増えても受け入れ側の体制が整っていないと警鐘を鳴らした。「国内移植の実施件数が2%に留まる現状では、海外移植に頼る発想が根本から断ち切れない。持続可能な制度設計こそが必要だ」と語った。

湘南鎌倉総合病院臓器移植外科部長の大久保恵太医師(清川茜/大紀元)

 

台湾の医療現場からの警鐘

さらに、台湾大学病院の黄士維医師は、台湾における腎移植の待機期間が5〜7年に及び、多くの患者が中国で移植を受けている実情を報告。中国では2~4週間、または2日以内移植が可能、複数の提供候補者から「選択」できる仕組みや、帰国後の医療記録が不透明といった異常な体制が存在していると述べる。移植医療の倫理的持続可能性を確保するには、データのトレーサビリティ確保や、医師が倫理的判断を下せる制度的環境整備が不可欠であると訴えた。

台湾大学名誉教授の蔡甫昌医師は、台湾で行われた倫理制度改革の実例を紹介した。2015年の法改正により、海外移植の届け出義務化、医師の仲介行為の禁止、厚生当局による監視体制が制度化された。蔡氏は「患者を罰するのではなく、医療関係者が非倫理的行為に加担しない制度的防御壁を設けることが要である」と述べ、日本においても同様の改革が求められると主張した。

「国家ぐるみの殺人」

ドイツの医師であり、臓器強制摘出に反対する医師団(DAFOH)創設者のトルステン・トレイ医師も、オンラインで参加。中国では、法輪功学習者やウイグル人などの良心の囚人が臓器提供者となっている実態に触れ、「国家ぐるみの殺人による臓器収奪」だと非難した。

トルステン・トレイ医師(清川茜/大紀元)

 

トレイ医師は、日本が今後とるべき措置として以下の3点を提言した。

1.提供源が不明な移植への関与を禁止する法律の制定

2.渡航移植に関する届出制度の構築

3.中国との医療および学術協力の見直し

「人道上許されない問題」

衆議院議員の升田世喜男氏は、「臓器移植は命を救う素晴らしい医療だが、強制的な臓器売買や犯罪的行為は人道上許されない。中国での生体臓器収奪の事実があるとすれば、早急に是正されるべきだ」と語った。この問題を真剣に議論し、国際社会として取り組む必要がある」と訴えた。

ニュージャージー州選出のクリス・スミス米下院議員もメッセージを寄せて、「強制臓器摘出、すなわち『医療を装った殺人』の深刻な実態に我々は向き合わなければならない」と指摘した。

また、5月に下院で可決された「生体臓器収奪阻止法案」に触れ、毎年2〜3万人の若者(平均28歳)が臓器摘出のために命を奪われ、その臓器は共産党幹部や高額医療費を支払う外国人に「注文通り」に提供されていると述べた。

スミス氏は、民主主義国家間の連携の重要性を強調し、「単に学び合うだけでなく」、制度の共有と法整備を通じて「連帯し、強制的な臓器収奪に終止符を打つべきだ」と呼びかけた。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。