アメリカ大紀元メディア・グループのジャニス・トレイ最高経営責任者(CEO)は、中国共産党(中共)政権による国際的な抑圧と浸透工作が、アメリカの基本的自由および国家安全保障を脅かす「静かな戦争」であると警告した。この見解は、トレイ氏がアメリカ連邦議会のレイバーン・ビルで開催されたフォーラムにおいて述べたものである。
中共の70年にわたる戦略的浸透
トレイ氏は、中共が国際的な浸透および戦略的展開を70年以上にわたり継続してきたと指摘した。
「天安門広場の毛沢東の肖像の横には『世界人民大団結万歳』というスローガンが掲げられ、習近平はこの理念を『人類運命共同体』という言葉で言い換えた。つまり毛沢東から習近平に至るまで、中共は従来の戦争という手段ではなく、秘密裏に影響力を行使し、開かれた社会を利用して転覆を図ることで、第二次世界大戦後にアメリカが主導して築いてきた民主的な国際秩序を揺るがしてきた」と。
さらに、トレイ氏は「中共には明確な浸透戦略がある。たとえば、1948~49年の中国内戦では、兵力や武器で劣っていたにもかかわらず、浸透工作、スパイ活動、心理戦を駆使して国民党に勝利した」と説明。こうした手法は、中共が「70年以上にわたり、グローバル戦略を展開してきた」ことを示していると強調した。
法輪功への弾圧と、神韻、大紀元への攻撃
「1999年、中共は、法輪功を根絶することを目的とした全国規模の弾圧を開始した。背景には、当時法輪功の学習者が中国国内で1億人を超え、共産党員(約6千万人)を上回っていたという事実があった」と語り、「法輪功が掲げる『真・善・忍』の理念は、政治に関与せず、健康で誠実な市民であろうとする意識を人々に芽生えさせたが、一方、共産党指導者は選挙によって選ばれたわけではなく、まさにその点が彼らにとって最大の脅威となった。中共は、急速に拡大する法輪功を危険視し、軍・警察・司法・宣伝機関を含む国家の全機構を動員して、法輪功学習者に対する中傷、逮捕、拷問を組織的に行ってきた」と、トレイ氏は述べた。
法輪功に対する違法な迫害は現在も続いており、その期間は26年に及ぶ。明慧ネットの報道によれば、2024年には164人の学習者が迫害により死亡し、2025年1~5月の間に少なくとも380人が不当な判決を受けた。広東省珠海市の中級人民法院の判事は、「すべての判断は、中共政法委員会の指示を仰いでおり、自らの裁量権はない」と証言した。
こうした弾圧に対し、世界中の法輪功学習者は、非暴力で抵抗を続けてきた。その一環として、24年前に設立されたのが『大紀元時報』である。トレイ氏は「『大紀元時報』は現在、23の言語で発行し、35か国で数百万人の読者を持つ」と述べた。
2004年11月、同紙が発表した社説『共産党についての九つの論評』は、全世界における中国共産党・共青団・少年先鋒隊からの大量離脱運動を引き起こし、現在までにその数は4億4796万人に上っている。
さらにトレイ氏は、「『大紀元時報』がその後発表した『悪魔が世界を統治している』では、共産主義のイデオロギーが、いかにして西洋社会のほぼあらゆる分野に浸透しているかを明らかにし、また神韻芸術団は、世界各地の劇場で中国の伝統文化を復興させ、共産主義に汚染されていない本来の中国の姿を描き出した。これらの取り組みは、国際的に共感を呼び、中共の情報戦に対する有力な対抗手段となった」と述べた。
「中共は特に『大紀元時報』と神韻芸術団を攻撃の標的にし、これらの団体は、中共政権による人権侵害や思想抑圧を公に告発しており、同時に中共支配以前の伝統文化の復興にも尽力しているからだ」と強調した。
中共による米国の法制度・行政機構の「武器化」
トレイ氏は、中共が単なるスパイ活動を行っているだけではなく、アメリカの法制度や行政機構そのものを利用して、中共の反対勢力を抑え込もうとしていると警告した。
「中共は、アメリカの法律および行政制度を操作し、訴訟、規制当局への苦情申立て、官僚による圧力などを通じて異論を封じ込めていて、たとえば、中共は代理人を使って、法輪功関連団体のリソースを意図的に消耗させようとし、仮に訴訟が却下されたとしても、中共側はそれを宣伝に利用し、実際の判決内容にかかわらず、法輪功や関連団体の評判を損なうことを狙った」と述べた。
その具体例として、トレイ氏は以下の2件を挙げた。
一つ目は、2023~24年にかけて発生した事件である。アメリカ市民の陳軍(ちん ぐん)と共犯者・林峰(りん ほう)は、アメリカ内国歳入庁(IRS)の職員に賄賂を渡し、神韻芸術団の非営利団体資格を取り消させようとし、両者は、中共が法輪功弾圧のために、1999年に設立した違法機関「610弁公室」と関係があるとされ、最終的に陳軍は、自身が中共の未登録代理人であることを認めた。
ワシントンD.C.の裁判所資料によれば、陳軍は中共から月額5万2千ドル以上の報酬を受け取っていた。
二つ目は、2023年にニューヨーク州で起きた訴訟案件である。アレックス・シラ氏は、神韻芸術団の本部である龍泉寺に対し、根拠のない環境訴訟を起こし、現地の法輪功学習者を監視していた。ニューヨーク州の連邦判事は「その環境訴訟の主張には何の根拠もない」として訴えを却下し、今後の提訴も禁止した。
さかのぼること6年前、シラ氏は龍泉寺から約40マイル離れた地域に「ニューヨーク中部環境・持続可能性促進委員会」という団体を設立し、法的手段によって同寺への嫌がらせを繰り返していた。彼はこれまでに同寺を4回提訴している。さらに、ニューヨークに移住する前は中国・天津に15年間滞在しており、当該団体を設立した1か月後に、中国国内で新会社を設立していたことも判明した。
中共、西側メディアを「武器」に
トレイ氏は「中共は毎年70億ドルを超える予算を世界規模のプロパガンダ活動に投入しており、西側メディアへの浸透工作にも多額の資金を投じている」と指摘した。
アメリカの主要メディアの一部は、神韻芸術団に対して「資金の私的流用」とする報道を行ったが、法学者の袁紅冰氏らは、これらが中共の工作により用意された「告発者」の証言に依拠しているとみた。
トレイ氏は「こうした『告発者』が中国国内で自由に活動しているという事実自体、これは真の中国反体制派にとっては想像もできないことだ」と述べた。
さらに、「中共は、西側メディアの信頼性を逆手に取り、『大紀元時報』のような中共政権を批判するメディアを中傷し、中共の人権侵害を暴露するプラットフォームの影響力を低下させようとしている」と語った。
「中共による越境型の弾圧は、法輪功に対する攻撃にとどまらず、民主主義国家の根幹を揺るがす直接的な挑戦である。こうした戦術は、言論の自由、信教の自由、そして国家安全保障を脅かすものであり、法制度、報道機関、監督機関を操作することで異論を封じ、国際世論を中共に有利なように再構築しようとした。その手法は、かつて中国国内で国民党を転覆させたときとまったく同じである」と述べ、講演を締めくくった。
「静かな戦争」にどう対処すべきか
トレイ氏は、この「静かな戦争」に対抗するために、アメリカが講じるべき4つの具体策を提示した。
1.外国代理人登録法の強化と厳格な執行
2.メディアおよび政策決定者による外国勢力との関係の開示義務の導入
3.政府機関が外国勢力の影響下に置かれたり、監督権限が濫用されることの防止
4.独立系メディアおよび伝統的価値観に基づく団体への支援強化
トレイ氏は最後に、語った。「法輪功学習者は、真実を明かすことと非暴力による抵抗に身を捧げてきた。これからも、彼らの権利を守ることは、道義的な責務であるだけでなく、自由そのものを守ることでもある」と。
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