米中貿易戦争の一時的な休戦と経済・労働市場の先行き改善を受け、アメリカの消費者信頼感が5月に大幅に回復した。全米産業審議会(Conference Board)が27日に発表した最新調査によると、5月のアメリカ消費者信頼感指数は前月比12.3ポイント増の98となり、これは2011年以来最大の月間上昇幅、かつ昨年11月以来初の月次増加となった。経済学者の予想値(88)を大きく上回る結果で、アメリカ経済の回復基調を裏付けるものとなった。
今回の調査では、今後6か月間の消費者予想を示す指標も2011年以来最大の上昇幅を記録したほか、現在の経済状況を示す指標も上昇した。消費者信頼感の改善は年齢層、所得層、政治的立場を問わず広範囲に及び、特に共和党支持者の信頼感の伸びが著しかった。
消費者はビジネス環境、雇用市場、そして自身の所得見通しに対して一段と楽観的になっている。このため、今後6か月以内に自動車や住宅、大型家電の購入、さらには旅行を計画する人が増加している。
一方で、現在の雇用市場に対する消費者の見方は複雑だ。5月には「雇用が十分にある」と答える人が増えた一方で、「仕事探しは難しい」と感じる人も増加した。両者の差は労働市場の健全性を測る重要な指標とされるが、このギャップは5か月連続で縮小している。
今回の調査は5月19日までに実施され、米中貿易戦争の一時休戦と関税引き下げを発表した直後のタイミングだった。回答の約半数は5月12日の米中合意後に集められており、貿易摩擦の緩和が消費者心理に好影響を与えたとみられる。
ここ数か月、トランプ政権の関税政策による影響でアメリカ国民の経済観は悪化し、先月の消費者信頼感は新型コロナウイルス流行初期以来の低水準に落ち込んでいた。しかし、トランプ政権が他国との貿易交渉で進展を見せたことが5月の信頼感回復を後押しした。
全米産業審議会の上級エコノミスト、ステファニー・ギシャード氏は「5月12日の米中合意前から信頼感の反発は始まっていたが、その後勢いを増した。月間の改善は消費者の期待感の高まりが主因であり、ビジネス環境、雇用、将来所得のいずれも4月の低迷から回復した」とコメントした。
5月8日には米英間で一部品目の関税を引き下げる貿易協定が発表され、トランプ氏は「画期的な合意」と強調。12日にはジュネーブで米中初の貿易協議が行われ、関税引き下げと貿易戦争の一時休戦で合意し、今後3か月以内に包括的な合意を目指す方針が示された。
さらにトランプ大統領は25日、EUへの50%関税の発動を7月9日まで延期する意向を表明。これは6月1日からの課税開始を延期するもので、アメリカの対外貿易政策の柔軟な対応が続いている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。