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前月比58%減 Temu米国ユーザー激減と免税撤廃の影響

2025/06/03
更新: 2025/06/03

アメリカ政府が中国・香港からの小包み免税(デミニミスルール)を撤廃したことで、中国発格安EC「Temu」のアメリカユーザー数が急減し、業績も大きく悪化している。新関税政策により、TemuやSheinなど中国系ECプラットフォームのビジネスモデルが揺らいでおり、米中貿易摩擦の影響がグローバルEC業界全体に波及している。

中国発の格安ECプラットフォーム「Temu」は、アメリカ市場において大きな打撃を受けている。市場調査会社Sensor Towerの最新データによれば、今年5月におけるTemuのアメリカでの1日あたりのユーザー数は、前月比58%の急減となった。背景には、アメリカ政府による中国・香港からの小包み(De Minimis)に対する免税措置の撤廃がある。

少額免税制度は、国際貿易の円滑化を目的として導入され、800ドル未満の小口輸入品に対する関税を免除する仕組みであった。この制度の利便性が、中国からのフェンタニル成分の密輸や、Temu、Shein、Amazon Haulなどを通じた中国製の安価な衣類・玩具・家具の大量流入を招き、アメリカの与野党双方から強い批判を引き起こしていた。

今年5月2日には、トランプ大統領の署名によって大統領令を発効し、中国・香港・マカオからアメリカへの全ての小包みに対する免税が撤廃された。さらに5月13日には税率の一時的な調整が行われ、5月14日以降、従価税率は120%から54%に引き下げられたものの、1商品あたり100ドルの従量課税が維持された。

この政策変更は、TemuやSheinの事業構造に直接影響を及ぼした。両社は長年、少額免税制度を活用し、中国のサプライヤーからアメリカの消費者へ商品を直接配送することで、圧倒的な低価格を実現してきた。しかし関税強化以降、売上高と顧客増加率は急激に落ち込んだ。特にTemuの減少幅が大きく、Bain & Companyのデータによれば、Sheinを上回る下落を記録している。

関税負担の増加は、両社の価格戦略にも影響を与えている。Second Measureの分析によると、Sheinは4月25日から5月1日にかけてのアメリカの売上高が前週比で23%減少し、Temuも同時期に17%の減少を記録した。3月から4月初旬にかけては、値上げを見越した消費者による日用品や衣類の買いだめで売上が一時的に増加したが、関税の適用開始後にはその反動で大幅に減少した。

Temuはロイターからのコメント要請に応じていない。

一方、モルガン・スタンレーのアナリストであるシメオン・グットマン氏は、5月のレポートで「関税免除期間終了後、Temuのユーザーエンゲージメントが大幅に低下した」との見解を示している。

5月27日に発表された拼多多控股(PDD Holdings)の2025年第1四半期決算によれば、Temuの親会社である同社の利益は前年同期比で47%の減少となった。一方で、マーケティング費用は43%の増加となっている。決算説明会において経営陣は、「関税が加盟店に大きな圧力をかけている」と説明した。

HSBCのアナリストによれば、Temuの加盟店は現在、中国からTemu提携のアメリカの倉庫へ個別注文を発送する方式を継続しているが、関税・通関手続き・書類作成などの事務的負担が増加しているという。Temu本体は、引き続きアメリカ国内での配送・オンライン運営・価格設定を担っている。

このような状況を受け、Temuはアメリカ市場への依存から脱却する方針を掲げ、他国市場への展開を加速させている。ただし、アジアの主要市場である日本でも小包み免税制度の見直しが検討されており、欧州連合(EU)も中国からの小口輸入品に対して一律の課徴金を課す案を進めている。

小包み免税撤廃にともなうTemuの急激なユーザー減少と業績悪化は、グローバルEC業界全体に大きな波紋を広げている。今後、各国で規制強化が進めば、TemuやSheinといった中国系格安ECプラットフォームのビジネスモデルそのものが試される局面を迎えることになる。

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