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イスラエルがイランの核開発計画に与えた損害の規模

2025/06/18
更新: 2025/06/18

イスラエルによる6月13日のイラン攻撃は、イランが核兵器を開発するのを阻止するという明確な目的のもとで実施された。

「ライジング・ライオン作戦」とコードネームが付けられたこの作戦は、旧約聖書『民数記』の一節に由来し、イスラエルはイスラム政権の核開発計画に不可欠な核施設を含む多数の標的を攻撃した。

しかし、エルサレムの電撃的な攻撃は、その目的をどこまで達成したのだろうか。

核施設への攻撃

攻撃前、イランは純度60%までウランを濃縮していることが知られていた。この濃度は、核兵器級(90%)に容易に精製できる水準である。世界原子力協会(WNA)によれば、イランが公に主張する発電用の民生用原子炉の多くは、3~5%の濃縮ウランを必要とするに過ぎない。イランの指導者たちは平和的な核エネルギー計画を維持していると繰り返し述べているが、2018年に高濃縮ウランの生産を再開した。

国連の原子力監視機関である国際原子力機関(IAEA)は、2月時点でイランが約605ポンド(約274キログラム)の60%濃縮ウランを備蓄していると評価していた。

6月13日、IAEAはイランの核施設2カ所が攻撃で損傷したと発表したが、その正確な範囲は不明である。

損傷を受けたのは、ナタンズ核施設とイスファハン核技術センターである。

以下は、現時点で判明している攻撃の影響である。

ナタンズ

ナタンズ核施設(正式名称:シャヒード・アフマディ・ロシャン核施設)は、テヘランから約180マイル南のナタンズ近郊に位置する。IAEAによれば、イスラエルの攻撃はパイロット燃料濃縮プラント(PFEP:Pilot Fuel Enrichment Plant)の地上部分を破壊した。ここはイランが最大60%まで濃縮されたウランを生産していた施設のひとつである。

また、同施設の電力インフラ――変電所、主電源供給棟、非常用電源やバックアップ発電機――も壊滅したとされる。

IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は6月16日、ウィーンで行われた理事会で、「地上建屋は損傷したが、パイロット燃料濃縮プラントや主燃料濃縮プラントがある地下カスケードホールへの物理的な攻撃は確認されていない」と述べた。しかしグロッシ氏は、カスケードホールへの電力供給喪失により、そこに設置されていた遠心分離機が損傷した可能性があるとも付け加えた。

IAEAは、施設外の放射線量は通常レベルにとどまっており、周辺住民や環境への即時的な脅威はないと示唆した。

一方、施設内部についてグロッシ氏は「放射線および化学的な汚染がある」と述べた。

グロッシ氏はその後、BBCに対し、ナタンズで稼働していた約15,000台の遠心分離機――ウラン濃縮に用いられる機械――が停電の影響で大きく損傷、あるいは破壊された可能性が高いと語った。

6月17日、IAEAはSNS「X」に「金曜の攻撃後に収集した高解像度衛星画像の継続的な分析に基づき、ナタンズの地下濃縮ホールへの直接的な影響を示す追加要素を特定した」と投稿した。

イスファハン

イスラエルの攻撃で損傷したもう一つの核施設は、ナタンズから南に約100マイルのイスファハン市にあるイスファハン核技術センターである。IAEAによれば、6月13日の攻撃で同施設の4棟が損傷した。損傷したのは「中央化学研究所、ウラン転換プラント、テヘラン原子炉燃料製造プラント、そして建設中のUF4からEU金属加工施設、これはウラン化合物である四フッ化ウラン(UF4)を金属ウラン(EU: Enriched Uranium、濃縮ウラン金属)に加工するための施設である。

ナタンズ同様、IAEAは「施設外の放射線量は変化していない」と述べた。

ウラン転換プラントはウラン金属の加工が行われていた場所である。ウラン金属技術は他の用途にも使われるが、核兵器のコア製造に不可欠な技術である。もしイランが核兵器を製造しようとする場合、兵器級ウランをウラン金属に加工する必要がある。

転換プラントが稼働不能となれば、イランは外部からの調達がない限り、いずれ濃縮用ウランが枯渇することになる。

残りの施設

IAEAは、フォルドゥ燃料濃縮プラントや建設中のホンダブにあるアラク重水炉では損傷が確認されていないと述べた。ブーシェフル原子力発電所やテヘラン研究炉も標的にはされなかった。

これらの中で、イランの核開発計画にとって最も重要なのはフォルドウである。

フォルドウは、テヘラン南西約60マイル(約100キロ)のコム市近郊にある。厚い岩盤の地下約260フィート(約80メートル)という非常に深いところに建設されている。

ナタンズに次ぐイラン第2のウラン濃縮施設で、2009年から稼働している。イラン国営メディアは2016年、フォルドゥ施設周辺にロシア製S-300地対空ミサイル防衛システムが配備されたと報じた。

イスラエルは同施設の破壊を目指していると公言しており、駐米イスラエル大使イェヒエル・ライター氏は6月13日、米FOXニュースに「この作戦全体は、フォルドウの排除をもって完了しなければならない」と語った。しかし、その立地ゆえにフォルドゥはイスラエルにとって極めて困難な標的となっている。

イランの核計画の現状

イランの核計画は極めて秘密主義的であり、IAEAも現地訪問できていないため、イスラエルの攻撃がイランの核計画をどれだけ後退させたか、正確に知ることは不可能である。しかし、ナタンズとイスファハンという二つの主要核施設のほぼ壊滅、ならびに多数の上級軍事関係者や核科学者の死亡は、テヘラン政権にとって大きな打撃であることは間違いない。